飲食店が備えていないといけない機能を備えていない件
この記事を読むメリット
○自分にとって失敗はなにか?がわかる
○成功者の言葉が響かない理由がわかる
○足元を固める重要さがわかる
○最初に努力すべきことがわかる
0. ごあいさつ
はじめに、新型コロナウイルスの影響で窮地に立たされている飲食店経営者のかた、従業員のかた、ご不安お察しいたします。
元居酒屋経営者として、優良で価値のある飲食店が閉店に追い込まれている状況に怒りや虚しさを感じています。
僕は8年間経営した居酒屋を廃業してから、もう8年近く経ちます。その後、不動産業界で働き、多くの飲食店を開業されるかたのサポートをしました。そこで感じたこと、勉強したことをこれから開業されるかたにお伝えできればと思っています。
今回の飲食業界の未曾有の危機に対して僕ができそうなことはそれくらいしかないので。
基本的に「失敗しにくい」をお伝えしていきます。今回コロナで閉店された方、廃業されたかた、勤務先が閉店・廃業され職を失ったかた、これらのかたは僕は失敗だと思っていません。厳密に言うと対処する方法があったのかもしれませんが、不可抗力と考えたほうが良いと思います。
そして、再チャレンジをする機会を奪われた訳ではありません。なんでも1回目より2回目、3回目と、どんどん上手くなるものです。また改めて、新しい時代にあった飲食業を起こされることを期待しています。少しでもそのお力になれればと思っています。
1. 失敗とはなんだろう
勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし。
これは昔のお殿様が言った言葉だそうです。僕がこの言葉を知ったのは、今年2月に亡くなった野村克也監督のインタビューでした。
僕なりのこの言葉の解釈は、 「勝つ場合には、理由はわからないけど不思議と勝つときがある。たまにある。しかし、負けるときには原因がはっきりわかる。負けるべくして負ける。」こんな感じです。
負ける = 失敗 と定義したときに、飲食店経営によく当てはまるように感じます。
失敗とは = 物事をやりそこなうこと。方法や目的を誤って良い結果が得られないこと。しくじること。(goo辞書)
飲食店経営における失敗ってなんでしょうか?
1.「初期投資が全く回収できないまま廃業」
これは失敗でしょう。
2.「どうにか食べていけるが、先の展望がない」
一見良くない状況のように思いますが、毎日気楽に楽しく生活できれば、それはそれで幸せだと思います。
3.「1号店が順調なので2号店を出したかったが、体制が整えられず出せていない」 これを失敗に入れると怒られそうですけど、経営者本人的には全体を失敗と認識している場合も多いと思います。
4.「かなり無理をして2号店を出したが、2号店の不振で、本店の利益を食い潰している」これはかなり危険な状況だと思いますが、周りから見れば成功者に見える場合も多いと思います。
5.「売上・利益は順調だが、仕事に追われ、悩みは絶えず、なんか幸せじゃない」 これも危険な状況だと思います。
1番ようにわかりやすい失敗を除いたら、失敗と感じるものは人によって大きく変わると思います。時間によっても大きく変わると思います。開業したてのときは、とりあえず食っていけるように。開業して3年くらい経って、売上が順調だと2号店を出したくなってくる。
繁盛店の経営者は経営者としての経験のなかで、開業当初、苦労してからようやく軌道にのり、繁盛店になる。この過程で自己肯定感・全能感・疲労・傲慢さの芽生え・日々の業務への退屈、このような精神の軌跡をたどる場合が多いと思います。それによって失敗を引き寄せる場合も多い。
経営者には目標と成長が絶対に必要、とは限らない。成長を求めるばかりに店を潰すというのはよくある話です。
2. 失敗しやすく、成功しにくい?再現性のルール
ここからは、開業されるかたが、主に1番の失敗(初期投資が全く回収できないまま廃業)を回避できるように僕の考えを発表していきたいと思っています。
先ほどの
勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし。
ですが、再現性の問題に大きく関わると思ってます。
僕は成功者の成功談(成功要因の分析)にはいろいろとツッコミどころがあると思います。実際にツッコんでる場合も多いです。
「運が良かったんじゃない?」
「時代が良かったんじゃない?」
「たまたまブームに乗れただけだろう」
「そんな些細な要素で成功する?」
「この経営者は自分の店が順調な理由を本当に理解しているのかな?」
などと、性悪の僕は思ってしまう。このように成功者が言う成功の秘訣をそのまま実行しても同じように成功できない内容を、再現性が低い、再現性が無い、と言います。
逆に、失敗してしまった人の原因をそっくりそのまま実行すれば、ほぼ完全な形で再現できるのではないか?と思う。そこまで完全ではなくてもそれなりの形で再現できる可能性は高い。これを再現性が高い、と言います。
なぜこうなるのかというと、成功の要因は成功者が語るいくつかの要素で起こったものだとしても、その他の要素がバランスよく絶妙に均衡している土台の上でしか成り立たない場合が多いと僕は思っています。
しかし失敗の再現性は違う。いろいろな要素がそれなりに均衡していたとしても、一発アウト要素がひとつでもあれば、それだけですべてがアウトになる場合が多い。だから再現性が高く、安定してアウトになる。
3.一発アウト要素をなくす
一発アウト要素とは
例えば:
・店員の肩にフケが積もっている
・Gが走り回っている
・お客さんが敬語なのに、店員がなぜかタメ口(このブログではお客様ではなく、親近感や愛念をもってあえてお客さんと呼びます)
・営業時間のハズなのになぜか閉まっている
・おしぼりが臭い
・店員を呼んでも気づかない、くっちゃべってる
・注文を取りに来ない
・注文をしてから料理が出るまでが遅すぎる
・会計が不明瞭、なんかぼったくられてる?
・その他もろもろ
他にもいろいろあるだろうし、上記の要因もお客さんによってはもちろん不快だが、一発アウトではない場合もあるだろう。また、もちろん僕にとってギリギリセーフでも、そのお客さんにとっては一発アウト、即退場の要素もあるだろう。
一発アウトだと感じたお客さんは二度と来店することはない。
飲食店は一発アウト要素はなくさないといけない。(当たり前のことだけど、世の中に実際に一発アウトのお店は存在する。出くわした人も多いだろう)
4.僕が考える飲食店が最低限備えていないといけない機能
・安全である(最悪の場合、ひとの命に関わる)
・不潔でない(清潔である、というわけではない。安全性にも関わる)
・不愉快でない(お客さんによって大きく違うが。無愛想な店員を好む癖のお客さんも一定数存在する)
・わずらわしくない(複雑な注文体系でバカにされた気分になるときもある)
・妥当な対価(高すぎる→二度とこない。 安すぎる→店が維持できない)
・家でできないなにかがある(料理・サービス・場所・価値観など)
決してプラス方向の要求が多い訳ではないことに気づいていただけたと思います。一発アウトをクリアして、最低限の機能を備えてからが、ようやくあなたの作りたい店を作れるターンが回ってきます。 しかし、一発アウト要素があるのに、最低限の機能を備えてないのに、自分の「こだわり」を中心にした店づくりをしたがる開業希望者が多い。あまりにも多い。
5.なぜ「こだわり」に「こだわる」のか?
開業者にとって「こだわり」に「こだわる」のは楽しい。
夢がふくらむ。妄想がふくらむ。これこそが自己実現だ!!
自分が好きなモノをお客さんも好きになってくれる。お客さんが自分を好きになってくれる。そんなお客さんは大好き!!
好きなモノ、好きなヒトに囲まれて毎日生活ができて、お金も儲かる。キャー! キャーー!!
キャァ━─(◆*ノ∀`*)ノ─━ッッ!!!
夢のようだ。
夢の世界だ。
それに引き換え、一発アウト要素なくし、最低限ラインを超える作業は地味でしんどくて、評価もされにくい。
なによりこのラインを決められた時間内に、毎日超えていくのにはそれなりの訓練(あえて修行とは書きません)が必要になる。そして、そんなに楽しくない。毎日営業開始時間までに確実に超えないといけないのだから。
で、そのことを理解していない、できない開業者が、足元がおろそかな「クセに」、「変な」「こだわり」を押し付けてくるジャマくさい店を作ってしまう。
「変な」と書いたのは、自分がすべきことができていない飲食店の「こだわり」なんてお客さんにとって、聞く耳を持たないからです。
6.飲食店の廃業率
ここで飲食店の新規開業者の経過年数における廃業率を見てみましょう。公の機関が出したデータはないので、飲食店.comやその他のデータを参考にしたものですが、
1年以内の廃業率:30%
2年以内の廃業率:50%
5年以内の廃業率:60%
10年以内の廃業率:95%
とか、
1年以内の廃業率:30~40%
3年以内の廃業率:40~70%
6年以内の廃業率:60~90%
などの数字があります。
少し大きすぎる数字のようにも感じますが、飲食店の廃業率が他の産業に比べて高いことは間違いないでしょう。これはコロナ禍の前の数字ですので、2015年~2019年あたりに開業されたかたの数字はもっと厳しいものになると予想されます。
今回のように急激な環境の変化を除いて考えます。
1年以内の廃業の原因は開業の計画段階で排除できる可能性が高いと思います。その回避できるであろうワナに開業者の約30%ものかたが落ちている計算になります。
実にもったいない話です。
金銭的にもですが、せっかくの開業者の経験やビジョンや価値観をお客さんに提案・提供できる場を早々に失ってしまうことに最大のもったいなさを感じます。
僕は、一発アウトラインを超えること、最低限ラインを超えることで、1年以内の廃業は避けられると思っています。
これからブログやYouTubeを通じてラインの超え方、その先の価値の作り方を発信していきますので、一緒にがんばりましょう。
とりあえず、今回詳しくお伝えできなかった、僕が考える失敗の原因については次回以降詳しくお伝えします。
7.さいごに自己紹介
僕は、関西の地方都市のFラン大学を中退後、8年間飲食業界で勤務し、27歳で自分の居酒屋を持ちました。36歳で飲食店を廃業してから、夢であった海外移住生活を2年間経験し、帰国後宅建試験に合格し不動産仲介会社に就職しました。その4年後行政書士試験に合格し、2021年1月には行政書士として開業する準備を整えているところです。
あと、プログラミングの勉強もしています。
他の人から見ると変な経歴で、その道一筋って訳ではないですけど、僕はそのとき、そのときで一生懸命に目の前のことに集中して頑張ってきたつもりです。
世界中の誰にも予想できない未来を憂うより、目の前のことに集中し、新しいことを学び、挑戦し続ける人生でありたい、と思っています。
来年は僕も、また、開業1年生です。
あたらしい挑戦にわくわくしています。